腰椎椎間板ヘルニア
腰椎椎間板ヘルニアとは脱出した椎間板組織が神経根を圧迫して、腰痛・下肢痛を引き起こす病態を言い、退行性疾患の代表的な疾患です

【原因】
●急性発症の場合、重量物挙上などが誘因となりやすいです。慢性的な発症の場合、加齢や日常生活で椎間板への繰り返しの圧縮負荷が椎間板の変性につながり、それによって椎間板が後方に突出または脱出してしまいます。それにより脊髄神経を圧迫して腰痛・下肢痛が生じてしまいます。
【症状】
●主に運動や労働時の腰痛と片側の下肢痛
●咳やくしゃみでの腰痛・下肢痛の増悪
●下肢の感覚障害(しびれ)や排尿障害
●下肢の著名な筋力低下
➡特に下の2つは手術適応になりやすいといわれています。
【どのような姿勢がヘルニアになりやすいか】
●猫背・腰椎の後弯が大きい方

【診断】
下肢伸展挙上試験(膝を伸ばしたまま下肢を挙上し坐骨神経痛の出現を見る)や下肢の感覚が鈍いかどうか、足の力が弱くなっていないか等で診断します。

さらに、X線(レントゲン)撮影、MRIなどで検査を行い診断を確定します。ただし、MRI画像で椎間板が突出していても、症状が無ければ多くの場合問題はありません。

【治療】
●保存的療法
通常、ほとんどの患者は3か月以内に軽快するといわれています。
・急性期
安静・服薬(解熱鎮痛薬,非ステロイド性抗炎症薬など)によって痛みの抑制をしていきます。症状が強い場合はブロック注射(局所麻酔薬)を神経近くに注入することによって痛みを抑制する方法もあります。また、理学療法士によって徒手的に痛みを緩和する治療などを行います。
・慢性期
服薬(非ステロイド性抗炎症薬,トランキライザー,抗うつ薬)を使用しつつ、運動療法で痛みの鎮静化を図ります。ヘルニアを発症した方は特に猫背などの姿勢不良の方が多く、椎間板への圧縮ストレスが強くなるため、姿勢の改善や良い姿勢を維持するための運動指導をしていきます。
●手術療法
下肢の運動麻痺や排尿障害がある、保存療法を3か月以上行っても無効な場合に適応となります。方法は様々ですが、ヘルニア(椎間板)を取り出すことによって、ヘルニアによる神経への刺激を減少させる方法などが一般的です。最近では内視鏡を使った低侵襲手術も広く行われるようになってきました。
【理学療法】
●股関節柔軟性向上(特にお尻・太ももの裏の筋肉)
臀部や太ももの裏の筋肉の硬さは骨盤後傾・腰椎後弯につながり、椎間板の圧迫ストレスを強めてしまいます。
●胸椎・胸郭の可動性向上
胸椎・胸郭の可動性が上がると腰椎への動きの負担が減少し、椎間板へのストレスを軽減させることができます。
●体感安定性向上
腹部・腰部のインナーマッスルを鍛えることで腰椎の安定性が向上し、椎間板へのストレスを軽減させることができます。
そのほかにも症状に合わせてリハビリなどの治療を提案していきます。
【腰椎椎間板ヘルニアを予防するには】
●座位姿勢(図1)
・背中や腰が丸くならないように意識
・骨盤を立てるように

●重量物の挙上
・可能な限りお辞儀をしないようにする
・立った状態ではなくしゃがんでから持つようにする
・重量物を身体に近づけて持つようにする
●洗顔時などの中腰姿勢
・膝を曲げて深くお辞儀をしないようにする
●起き上がり
・朝起きる時は横向きになり両足をベットからおろして起き上がる
腰椎椎間板ヘルニア